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秋の雰囲気が沁みる日本文学・小説。秋になったら読みたい本

音楽の秋、読書の秋、芸術の秋がやってきました。
ほんのり肌寒くなって家にいる時間も増えてきたのではありませんか?

今回は、『秋の雰囲気が沁みる日本文学・小説』というテーマでいくつか本をピックアップしてみました。冬が近い寒くひんやりする季節とあって、ちょっびりホラーテイストな作品も。

秋の夜長に、のんびりと読書を楽しんでください。

国木田独歩『武蔵野』

国木田独歩『武蔵野』は、「秋だけ」をテーマにした作品ではありませんが、作中でとりわけ重心が置かれているのは「秋から冬にかけての武蔵野の風景」です。具体的な日付(九月十九日、十月十九日、冬の初めの雪など)を追いながら、初秋の気配から晩秋、初冬へと移り変わる武蔵野の情景が連続的に描かれます。

秋の乾いた空気を思わせる澄んだ筆致で、文章は素朴ですが鋭く、自然への敬意や心地よさがじわりと染みてきます。

読み終えるころには、外の空気を深く吸い込みたくなるような気持ちになる一冊です。

国木田独歩『武蔵野』の表紙

国木田独歩『武蔵野』
著者:国木田独歩
出版社:新潮社
発売日:1949/5/24
ページ数:352ページ

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時雨が私語(ささや)く。凩(こがらし)が叫ぶ。一陣の風小高い丘を襲えば、幾千万の木の葉高く大空に舞うて、小鳥の群かの如く遠く飛び去る。木の葉落ち尽せば、数十里の方域に亘る林が一時に裸体(はだか)になって、蒼ずんだ冬の空が高くこの上に垂れ、武蔵野一面が一種の沈静に入る。空気が一段澄みわたる。遠い物音が鮮かに聞える。

『武蔵野』の青空文庫はこちらから

恒川光太郎『秋の牢獄』

秋と言えば、恒川光太郎『秋の牢獄』を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。秋に閉じ込められた主人公。繰り返す11月7日。牢獄のような秋に終わりは来るのか。というほんのりホラーな短編集。

本書には、『秋の牢獄』のほかに『神家没落』『幻は夜に成長する』の2つの物語が収録されています。3つの物語の共通点は、”閉じ込められる”ということ。
秋と狂気が混ざり合う、仄暗く、美しさも感じる、秋になったらふと思い出す一冊です。

恒川光太郎『秋の牢獄』の表紙

秋の牢獄
著者:恒川光太郎
出版社:角川書店
発売日:2007/10/1
ページ数:223ページ

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11月7日水曜日。女子大生の藍は秋のその一日を何度も繰り返している。朝になれば全てがリセットされる日々。この繰り返しに終わりは来るのかーー。表題作他2編を収録、圧倒的な切なさと美しさに満ちた傑作中編集。

西崎憲編『11月の本』

11月をテーマに小説・詩歌・随筆を集めたアンソロジーです。

萩原朔太郎、国木田独歩、永井荷風、志賀直哉や幸田文まで、あらゆる秋を満喫したい人におすすめの一冊。

11月の本 (12か月の本 11)表紙

『11月の本 (12か月の本 11)』
著者:鈴木三重吉、田山花袋、小沼丹、林芙美子、岩本素白、幸田文、立原道造、ノーラ・ロフツ
出版社:国書刊行会
発売日:2025/9/24
ページ数:280ページ

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時代も場所もまったく異なる文学作品たちをつなぐテーマは〈12か月〉
12か月のうちの〈11月〉をテーマに古今東西の小説・詩歌・随筆を集めたアンソロジー。
四季をあじわい、あの作品といま同じ季節を生きるよろこびをつくる本。シリーズ全12巻。

【目次】
木靴(マルセル・シュオッブ/大濱甫訳)
十一月の願いごと(イタロ・カルヴィーノ/関口英子訳)
あかるい冬の窓(西崎憲)
深夜(鈴木三重吉)
坂(萩原朔太郎)
丘の上の家(田山花袋)
小春(国木田独歩)
枯葉の記(永井荷風)
秋風(小沼丹)
崩浪亭主人(林芙美子)
最後の一句(森鷗外)
こがらし(岩本素白)
十一月三日午後の事(志賀直哉)
沼のほとり(豊島与志雄)
水(幸田文)
風変わりな死(アルフォンス・アレー/西崎憲訳)
十一月三十日(「長崎ノート」より)(立原道造)
この四十年(ノーラ・ロフツ/小野寺健訳)
十一月のストーリー(レベッカ・マカーイ/藤井光訳)
 跋 十一月の音楽(西崎憲)

川端康成『古都』

川端康成『古都』は、双子の少女・千重子と苗子の出会いを通して、近代化の波のなか、京都という土地「失われゆく美」を描いた小説です。

春の花咲く景色から、夏の祭りの賑わい、秋の深まる紅葉、冬の静けさまで、四季を通して京都の町を見渡すように物語は展開します。特に秋になると、紅葉の色づきや深まる空気が、登場人物たちの心の陰影と重なり、鮮やかさと寂しさがまざりあう京都の姿が浮かび上がります。

京都の町を歩きたくなるような余韻の残る一冊です。

川端康成『古都』

古都 (新潮文庫)
著者:川端康成
出版社: 新潮社
発売日: 1968/8/27
ページ数: 288ページ

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私と同じ顔……あなたは誰?
京都を舞台に描く伝統美の到達点

京都の呉服問屋の娘である千重子は、幼馴染の大学生、真一と平安神宮へ花見に出かける。夕暮れ時、彼女はある秘密を明かすが、真一は本気にしなかった。その数か月後、夏の祇園祭の夜に、千重子は自分とそっくりな娘と出会う。あなたは、いったい誰? 運命の歯車が回り始めた……。

京都の伝統ある行事や街並み、移ろう季節を背景に、日本人の魂の底に潜む原風景を流麗に描く。ノーベル文学賞対象作品。

泉鏡花『高野聖』

泉鏡花が1900年に発表した幻想小説です。山奥を舞台に「旅の僧」と「謎めいた美女」の出会いを描きます。

季節を「秋」と宣言しているわけではありませんが、落ち葉の積もる山道やひんやりした空気、夜の山の静けさ、秋の情景や感覚に重なり、秋の夜長に読むのにぴったり。幻想と現実の境界があいまいな鏡花の文章は、心にじわりとした余韻を残し、季節の深まりとともに物語の静謐さを味わわせてくれます。

泉鏡花『高野聖』アニメカバー版表紙

『高野聖』(アニメカバー版)
著者:泉鏡花
出版社:KADOKAWA
発売日:2019/7/25
ページ数:293ページ

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飛騨から信州へと向かう僧が、危険な旧道を経てようやくたどり着いた山中の一軒家。家の婦人に一夜の宿を請うが、彼女には恐ろしい秘密があった。耽美な魅力に溢れる表題作や、滝の白糸で知られる「義血侠血」、「夜行巡査」「外科室」「眉かくしの霊」の5編を詳しい解説とともに収録。

『高野聖』の青空文庫はこちらから

八目 迷『琥珀の秋、0秒の旅』

これまで紹介した本とガラリと雰囲気を変えて、ガガガ文庫の小説です。
高校の修学旅行で北海道の函館を訪れていたその時、世界が止まってしまいます。動ける人間は主人公だけかと思いきや、もう一人地元の不良少女がいました。

琥珀の季節、時が止まった世界の中で、社会になじめない少年少女二人の、旅の物語。

本書は『夏へのトンネル、さよならの出口』、『きのうの春で、君を待つ』、に続くシリーズの3作目にあたります。

八目 迷『琥珀の秋、0秒の旅』の表紙

『琥珀の秋、0秒の旅』
著者:八目迷
イラスト:くっか
出版社:小学館
発売日:2022/8/18
ページ数:350ページ

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世界の時間が止まるとき、二人の旅が始まる

麦野カヤトは、高校の修学旅行で北海道の函館を訪れていた。
内気で友達のいない彼にとって、クラスメイトたちとの旅行は苦痛でしかない。
それでも周りに合わせてグループ行動を続けていた、そのとき。

世界の時が止まった。

まるで神様が停止ボタンを押したみたいに、通行人も、車も、鳥も、自分以外のあらゆるものが静止した。
喧騒が消え、静寂だけが支配する街のなか、
動ける人間は麦野カヤトただ一人……かと思いきや、もう一人いた。
地元の不良少女・井熊あきら。

「あんま舐めたこと言ってたらぶっ殺すかんな」

口調も性格もキツい彼女は、麦野とは正反対のタイプ。
とはいえ、この状況では自分たち以外に動ける者がいない。やがて二人は行動を共にする。

「琥珀の世界」ーー数日前に死んだ麦野の叔父が、そう呟いていたことを麦野は思い出す。
叔父の言葉は、世界の時が止まったことに関係しているかもしれない。
そう思い立った二人は、時を動かす手がかりを求めて、叔父の家がある東京を目指す。

時が止まった世界のなか、二人きりの旅が始まった。

彩瀬 まる『骨を彩る』

5つの短編からなる連作短編集『骨を彩る』。失くしてしまったもの、取り戻せないもの、そんな心に空いた穴に折り合いをつけて生きる人々の物語。「秋」をテーマとしているわけではないけれど、葉が色づき散っていくような、心に響く一冊です。

『骨を彩る』
著者:彩瀬まる
出版社:幻冬舎
発売日:2013/11/27
ページ数:239ページ

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十年前に妻を失うも、最近心揺れる女性に出会った津村。しかし罪悪感で喪失からの一歩を踏み出せずにいた。そんな中、遺された手帳に「だれもわかってくれない」という妻の言葉を見つけ……。彼女はどんな気持ちで死んでいったのか――。わからない、取り戻せない、どうしようもない。心に「ない」を抱える人々を痛いほど繊細に描いた代表作。