春の訪れを感じる瞬間は、人それぞれ。
花の香り、柔らかな日差し、ふわりと吹く春風。そんな季節を思い描くだけで、心がぽかぽか暖かくなってきます。
この記事では、一足先に春気分を楽しめる本をテーマに、春の雰囲気を感じる物語や、新しい出会いを予感させる一冊をご紹介します。
『春の数えかた』(エッセイ)
春と聞けば、桜や菜の花の咲く風景を思い浮かべる人が多いでしょう。
でも、生き物たちはどのようにして春を知るのでしょうか?本書では、植物や虫、鳥たちがそれぞれの独自の方法で季節を感じ取り、生きるための準備を進める様子を描いたエッセイです。
植物がほぼ毎年同じ高さに花を咲かせる理由や、蝶がタイミングを合わせて目覚める秘密。そんな日常の中で見過ごされがちな自然のドラマがぎゅっと1冊に詰まっています。
『根っこのこどもたち目をさます』(絵本)
冬の間に眠り続ける土の中の根っこたちが、春の到来に備えて目を覚ましました。春に着る服を作ったり、虫たちをきれいに洗ってあげたりと、それぞれが春の準備に忙しく働きます。そして、すべての準備が整った時、ようやく春が訪れます。
春は、突如として現れるのではなく、冬の終わりに少しずつ準備されているのです。
この絵本は、春の準備をする様子が、優しいイラストと共に描かれています。さらに、自然の美しさを子どもの視点で描きつつ、その中で「土」や「根っこ」という普段は目にしない存在に焦点を当てている点もユニーク。
春の息吹を感じるこの絵本は、大人が読むにもぴったりな一冊です。
『根っこのこどもたち目をさます』
著者:ヘレン・ディーン・フィッシュ
絵:ジビレ・フォン・オルファース
翻訳:いしい ももこ
出版社:童話館出版
発売日:2003年3月1日
ページ数:21ページ
大きさ:290 × 220 mm
春が近づいてくるころ、地面の下では、土のお母さんが、根っこのこどもたちを起こしてまわります。根っこの女の子も男の子も、春に着る服を縫ったり、虫たちを起こして洗ってやったり、それぞれ春の準備。そして、何もかもが整ったときに、春がやってくるのです。
『野の花えほん(春と夏の花)』(絵本)
すみれやれんげ、なずななど、身近に咲く草花を解説。草を使った遊び方、実の食べ方、観察のポイント、名前の由来などの情報が、かわいらしいイラストと共に紹介されています。
子どもの頃を思い出して「あ~!この草花で遊んだ!」と思わず声が出てしまうような懐かしさを感じる人も多いかもしれません。
春先に外に出る機会が増える時期、お散歩のお供として、花を探しながら読むのも楽しいですね。
『春の窓』(小説)
どこか懐かしい日常の風景から、童話のような世界まで、孤独や寂しさをそっと包み込む不思議な物語が詰まっています。どの作品にも、繊細で美しい描写が広がり、不思議と心がほぐれていくようです。
直接春をテーマとしているのは表題作だけですが、ほかの話もほっこりした良いものばかり。「北風のわすれたハンカチ」や「あるジャム屋の話」など、子どもの頃に読んだ昔話のような物語が、大人の心に深い余韻を届けてくれます。
『桜ほうさら』上・下(小説)
『桜ほうさら』は、宮部みゆきによる時代小説で、江戸時代の深川を舞台に、父親の汚名を晴らすべく奮闘する若き侍・古橋笙之介の物語です。
主人公・笙之介は、父親が賄賂の疑いをかけられて自刃したことで、家族が壊れてしまいます。彼は、父の無念を晴らすために江戸へ向かい、深川の長屋に住むことに。その中で、笙之介は「桜の精」のような少女・和香と出会い、事件の真相を解明する手がかりを得ていきます。
『桜ほうさら』のタイトルには、春の象徴でもある桜と、南信州や甲州の方言「ささらほうさら」(酷いめにあいましたね)が組み合わされています。桜の花が象徴する新たな始まりと、登場人物たちが抱える苦悩、人生の切なさ、ほろ苦さ、人々の温かさが交錯し、春という季節にぴったりなテーマが息づいている一冊です。
『桜ほうさら(上)』
著者:宮部みゆき
出版社:PHP研究所
発売日:2015年12月17日
ページ数:412ページ
大きさ:10.6 x 1.7 x 15 cm
人生の切なさ、ほろ苦さ、人々の温かさが心に沁みる、宮部時代小説の真骨頂!
父の無念を晴らしたい――そんな思いを胸に、上総国から江戸へ出てきた古橋笙之介は、深川の富勘長屋に住むことに。母に疎まれるほど頼りなく、世間知らずの若侍に対し、写本の仕事を世話する貸本屋の治兵衛や、おせっかいだが優しい長屋の人々は、何かと気にかけ、手を差し伸べてくれる。
家族と心が通い合わないもどかしさを感じるなか、笙之介は「桜の精」のような少女・和香と出逢い…。
しみじみとした人情にほだされる、ミヤベワールド全開の時代小説。
タイトルの「桜ほうさら」は、甲州や南信州の「ささらほうさら」(いろいろなことがあって大変という意味)という言葉に桜をからめた言葉。桜の季節に始まる心温まる物語。
(Amazonより)
『桜ほうさら(下)』
著者:宮部みゆき
出版社:PHP研究所
発売日:2015年12月17日
ページ数:412ページ
大きさ:10.6 x 1.7 x 15 cm
拐かし、偽文書、家族の闇…ドラマの原作にもなった傑作時代ミステリー。
上総国搗根藩から江戸へ出てきて、父の死の真相を探り続ける古橋笙之介は、三河屋での奇妙な拐かし事件に巻き込まれる。「桜の精」のような少女・和香の協力もあり、事件を解決するのだが。
ついに父を陥れた偽文書作りの犯人にたどり着いた笙之介。絡み合った糸をほぐして明らかになったのは、搗根藩に渦巻く巨大な陰謀だった。真相を知った笙之介に魔の手が…。心身ともに傷ついた笙之介は、どのような道を選ぶのか。
御家騒動を描いた武家物でありながら家族小説、青春小説でもある、宮部みゆきの新境地!
(Amazonより)
『さくらのふね』(絵本)
桜の花びらが川面に浮かび、風に乗って流れていく情景。躍動感あふれる水彩で描かれた虫や動物たちのイラスト。ページをめくるたびに春を感じる絵本です。
『はるとあき』(絵本)
春と秋を擬人化し、季節を通じて心温まる交流が繰り広げられる絵本です。主人公「はる」が、会ったことのない「あき」への手紙を書こうと決意するところから物語は始まります。彼女が綴る手紙には、春の花である桜や、秋の実りを想い描く温かな言葉が綴られ、読み手に季節の美しさを感じさせてくれます。
『はるとあき』
著者:斉藤 倫, うきまる
絵:吉田 尚令
出版社:小学館
発売日:2019年5月17日
ページ数:32ページ
大きさ:19 × 0.9 × 23.6 cm
そうだ あきに てがみを かこう
春夏秋冬と季節は巡ります。「私はあきにあったことがない。」そう気づいたはるは、あきに手紙を書くことを思いつきます。そこから始まる、はるとあきの往復書簡。忘れつつある大事なことを、思い出させてくれます。
【編集担当からのおすすめ情報】
永遠に会えない運命なのに、心を寄せ合う二人。古風な「手紙」という方法でやりとりするかわいい姿や、その内容は、少しもの悲しくも、心をほんわか暖かくします。美しい文章と、それに寄り添うかわいい絵で、忘れつつある大事なことを思い出させてくれる、新しい名作の誕生です。








